おお、来ました。こりゃ読ませます。「主人公と妹」の関係を幼少期から丁寧に描いてあるので感情移入が十分に出来ますね。本読みの方にはお勧めしても良い出来だと思いますが、「普段全く本を読まない」とか、「モニター上で延々と文章を読むのは嫌だ」と言う方は避けた方が良いかも知れません。

ＣＧ。原画に起用された米倉けんご氏の絵が好きな私としては文句はないですが、「裸がきちんと描ける」「ちゃんと色気がある」ことは18禁作品としては重要かと思います。塗りもOK。

音楽。出来は良いと思います。特に効果音の使い方・タイミングが非常に上手いですね。ちゃんと演出してます。ただ、私の環境だと特定の曲でＬチャンネルにノイズが乗ってたんですが、これはちょっと気になりました。また、エディタ(メモ帳)などを同時に立ち上げてタスク切り換えを行うと一時的にCD-DAのボリュームが跳ね上がります。気になったけど環境依存かな。

シナリオ。やはり誤記は気になりますが(ジュナイブル→ジュブナイルとか)、文章自体にリズムがあって読みやすいし、楽しめました。たまに出てくる小ネタも笑えるし。後半に出てくる「プレスリー」とか、シリアスなシーンに挿入されているだけに効果的。

惜しいところとしてはフォント関係。この手のゲームの常として、全画面表示では文字が大きすぎて気持ち悪いこと、ジャギが目立つことはマイナスです。私はこれが嫌で中盤以降はウィンドウ表示にしてました。選択できるフォントも少ないかな。明朝でも別に良いけど（その後、プロポーショナルが選択できるパッチを作られた方が居ましたので使用させていただきました）。

メッセージ送りはマウスの左クリックとShiftキーによる高速表示のみ。何故キーボードからでも快適に文字送りが出来る仕様に出来なかったのか？決して飛ばし読みしたくなる文章ではないですし、２回目以降は「次の選択肢まで飛ばす（未読の文章ではちゃんと止まる・やはりコレは便利）」がありますからそう不自由は感じなかったですけど。意図的なものかも知れませんが改善して欲しい。

最近買ったノベルタイプの作品には「終末の過ごし方」がありましたが、あちらが短編だったのに対して「加奈」は堂々たる長編です。特に導入部ではほとんど選択肢もなく、いつになったら終わるのかと思いました。また、Ｈシーンの描写が不自然に感じられるものも多い中、米倉けんご氏のように裸をきちんと描ける方が原画であると言うのは大きいと感じました。これは「ＯＮＥ」「To Heart」などと比較しても言えることだと思いますが。

選択肢はそこそこの数でしょう。セーブは30ヶ所出来る仕様になってますが、最後に使ったデータは25番目でした。また、ノベルタイプの作品には必須だと思われる読み返しに関しては、私はマイクロソフトのトラックボールマウスを使用してましたのでホイールを使った読み返しが出来たので非常に快適でした（ちゃんと選択肢まで戻れる）。

基本的に「兄弟同士の恋愛感情（近親相姦）」と言う禁忌を描くことが作品の大きなテーマである以上、もしこの作品が18禁ではなかったらここまでテーマを深く掘り下げることは出来なかったでしょう。そう言う意味ではとても「18禁らしい」作品ですね。

もう一つのテーマである「生と死」について。私は「物語のひとつの類型である『解答の無限延期』の典型としてのハッピーエンド（『その後も２人は幸せに暮らしました』って話）に留まらない」ことにこのお話の魅力があると感じました。「死は生の対極にあるのではなくその内側にある」ことを表現した物語として見ても高い完成度を持っていると思います。

エロゲーとして見るならば実用度は低い方だと思いますが（無いとは言わんが）、「生と死」と言う主題に「近親相姦」と言う禁忌を加えることで成立し得た良作だと思います。ノベルタイプの作品としては傑作と言っても良いかと。