システム・不具合等。フェアザンメルン（ビジュアルアーツ）標準に若干のアレンジを加えたような感じで、進行するのに不都合は特にありませんでした。ただ、読み返し機能がPageUp/Downキーのみで動作するようになっているので、これだけはちょっと分かりにくいかも知れません。また、途中までストーリーを進めて『メニューに戻る』を実行、再開すると動作不良を起こす不具合があったようです。事前にメーカーサイトから修正ファイルを落として当てた方が良いでしょう。

登場人物。攻略対象は5人＋2人。主人公の名前がデフォルトのままだと、他者からの呼びかけに音声が入ってます。

巣鴨睦月。教室の少女。ヒロイン。主人公は彼女の清純さに惹かれているが、同時にその過剰な聖性に怯えている。

高田望美。屋上の少女。明るく快活な印象ではあるが、独りで下界を望んでいるその様子は瞳の奥に影を感じさせる。

田町まひる。校庭の少女。主人公を「おにいちゃん」と呼ぶ幼なじみの少女。まるで猫のように気まぐれで子供っぽい。

目黒御幸。図書館の少女。対人関係が苦手で、本を読み耽る毎日を送る司書係。素直になれず、斜に構えた少女。

上野こより。弓道場の少女。一見ぼんやりしているように見える少女だが、たまに的を射るような鋭い言動も見られる。

大森となえ。愛煙家の保険医で、いつも気だるい雰囲気を漂わせている。主人公の心の支えになることもあるようだ。

高島瀬美奈。主人公の担当教諭。苦手意識が抜けない。毎日のように厳しい指導をする、毅然とした様子の女性。

グラフィック。原画は長岡建蔵氏。夕映えの橙色に統一された色調が印象的で、塗りと併せて非常に美しいものに仕上がってました。私は17インチCRT・32bit・フルスクリーンでプレイしていましたけど、液晶だとずいぶん印象が変わりそうな気がします。最近の他作品と比較してもこれだけ絵的な力と魅力を兼ね備えたものはあまり無いだろうと思わされる質の高さですが、猟奇的なグラフィックが多く含まれているので「そういうもの」が苦手な人には評価が低くなりそうですね。

BGM・効果音・音声。BGMの録音レベルがずいぶん低いようで、再生時にかなり音量を上げてやる必要がありました。楽曲の出来そのものはすごく良いですね（発売後にBGM等がCD-DAで収録されたCD-Rの送付が行われていましたが、現在は終了しています）。効果音も主人公の精神状態を表す「効果」を充分に感じさせる使い方をされてましたし、音声は最高レベルのものと言って問題ないでしょう。総じて非常に高品質なもので、全く文句を付ける気になりません。

シナリオ。粘りがあって腰の強い、レトリックの使い方や文章のリズムに優れたテキスト。主人公の独白が多く含まれているのだけど、読み手に「独り言」感を与えることなく納得して読み進めさせるだけの力を感じさせられました。ストーリーは一本道で、選択肢の出現があってもプレイヤーが物語に介入しているような錯覚を与えてくれるものではありませんが、ディスプレイ上の文字を追っていくうち、頭の中にゲーム内での『「リアル」』を現出させてくれる見事なシナリオでした。

えろ。美麗なグラフィックと音声の相乗効果で充分に使えるエロシーンになっていると思いますが、その場面への入り方はやや唐突でシチュエーションには特殊なものがあり、加えて要所にグロテスクで猟奇的なCGが入ってくる演出がされているために、エロティックな「いやらしさ」ではなく不快感を表すそれを感じる人も多いかも知れません。１枚絵を表示するだけではなく、画面上でのスクロールを多用して視覚の焦点がぶれるような表現がされているのも面白いですね。